“女性営業職”は孤独? 少数派? 営業部女子課に聞くブレークスルー

全国各地に支局があり、会員は3,000名を超える日本最大級の女性営業職のコミュニティ「営業部女子課」。

スキルアップを図る勉強会や交流会などを企画し、「職場では少数派」ということも多い女性営業職の働き方をサポートしています。結婚、出産などライフステージの変化によって、働き方の選択を余儀なくされることも少なくない女性が、直面しがちな悩みや、それを打破するためにどんな行動をとっているのか――

営業部女子課の会で理事を務める小川由香利さんと、神奈川支局特派員の中島明日香さんにお話を伺いました。

プロフィール(上の写真右から)

小川由香利さん

一般社団法人 営業部女子課の会 理事
ソニー株式会社で法人営業を4年半担当後、転職。現在アクセンチュア株式会社で経営コンサルタントとして従事。営業部女子課には2012年からメンバー加入。2013年から神奈川支局のリーダーを2年ほど務め、その後理事に就任。現在に至る。新規企画立案、事業計画立案等を担当。

中島明日香さん

一般社団法人 営業部女子課の会 神奈川支局特派員。

日本イーライリリー株式会社 糖尿病領域担当MR。営業部女子課においては2015年より神奈川支局のリーダーとして活動。神奈川県内での定例勉強会等の企画・運営を通じ、営業女性のスキルアップや交流機会創出に取り組む。

おふたりが営業部女子課に参加されたきっかけを教えてください。

小川由香利さん(以下、小川):前職のころ、営業の仕事で悩んでいたんです。なにか変わりたいと思っていた時、主宰の太田彩子さんの書籍を本屋で手に取って、「あぁ、こういう考え方もあるんだ」とすごく刺さったんです。

ちょうどそのころ、営業部女子課では年に一度の「夏の女子会」という100名規模で集まる大交流会を前に、幹事を募集していました。すごく単純な考えなんですけど、「幹事になれば太田さんに会えるし、いろいろと話せる」と思ったんです(笑)。自分自身も変われると思い、これはチャンスだと思って、幹事に応募しました。結果的に選ばれて、以来、営業部女子課の会の活動をしています。

中島明日香さん(以下、中島):2014年のことですが、日経WOMANに載っていた小川さんの記事を読んだんです。そこで営業部女子課の活動を知り、ちょうど「夏の女子会」が控えていたので、参加したんです。そうしたらちょうど、小川さんが神奈川支部会の特派員を務めていて、それで支部会の勉強会などに参加するようになりました。ですから、小川さんは私の憧れなんです(笑)。

営業=ガツガツ、はもう古い!?

当時はどのような悩みを抱えていたのですか?

小川:仕事をひと通り覚えたら、モチベーションを見失ってしまって、やる気がなかったんですね。そうすると、仕事もパフォーマンス出せなくて、さらにやる気を失って……という負の連鎖に陥っていました。

中島:新卒でMRとして入社して、5年目を迎えたころでした。営業のスタイルとしては基本的に外回り。病院に出向いて、医師に説明して……という感じで、1週間のうち、ほとんど会社のオフィスに戻らないこともあるくらい。外資系ということもあって、かなり個人の裁量が大きいんです。

ただ、新卒からその環境が当たり前だったので、自分の視野がとても狭いんじゃないかという漠然とした不安がありました。それを解消するにあたって、他業種の営業の方々の考え方を聞いてみることが、何かヒントになるんじゃないかと思ったのです。

また、私自身の地元が京都ということもあって、MR以外のつながりがあまりありませんでした。何か頼ったり相談したりできる仲間が増えても面白そうだな、単純に遊びに行ける仲間でもいいな、というところから参加しました。

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小川:働く女性が増え、「女性活躍推進法」が今年の4月から施行されて、後押しになってはいても、やはり営業というと男性のほうが多いですよね。そのなかで、営業として働く女性でさえも「営業なら、男性のようにガツガツ働かなくては……」という固定観念を持っている方もいます。そういうマインドだと、結婚、子育てとライフステージが変わるにつれ、どこかで限界がきてしまい、「このまま働き続けるのは難しいのかな」と感じてしまう方も多いと思うんですね。

たとえば、男性のようにガツガツとはどういった働き方でしょうか?

小川:昔ながらのやり方ではありますけど、長時間働いて、夜遅くまでお酒を飲んで接待して、土日はゴルフに行って、お客さまに対して過剰に下手へ出て……とにかく「結果」を求める営業手法ですね。

けれども現実的に考えて、女性がそれを実行することは難しいです。お客さまのニーズを引き出し、困っているときには親身になって話を聞いて、「結果」ばかりではなく、本当にお客さまの気持ちに寄り添ったところ、結果へつながったということは多いようです。

女性は「傾聴」「共感」という能力の高い方が多いように感じられますから、ある種営業に向いているんじゃないかと思うんです。

女子課に所属しているメンバーに話を聞いてみると、「ガツガツ働いている」ような人って正直少ないんです。むしろ、女性ならではというか、自分の強みを生かして、お客様にどういう価値を提供できるかということを模索しながら営業しています。

ですから、女子課の活動でそういった事例や考え方を共有しながら、女性の営業職をひとりでも増やせたら、と考えています。

中島:他業界の方の話を聞いていて、細やかな心遣いや気配り、臨機応変に対応していくことなど、ステキだなと思える人がたくさんいるんですよね。

私自身、業界的には競合他社や競合品などライバルが多く、またコンプライアンスも厳しくなっているなかで、差別化できることというと本当に「人」なんです。人間性がますます問われてきているので、すごく勉強になることが多いです。

営業女子の陥りがちな悩みとは?

女子課内でよく聞く悩みはどのようなものでしょうか。

中島:自分で抱え込んで、がんばりすぎる子が多いですね。私くらいの世代だと、上司からも後輩の面倒を見て、指導役になることを期待されています。

新人の時は、自分の範囲だけ見ていればよかったのに、社内でもいろいろと気を遣うことが多くなって。本当は誰かにお願いしたい仕事があるけど、「あの人も大変そうだな……じゃあ自分がやったほうが早いかな」って抱え込んで。結果的に眠れない日が続いて……いわゆる「抱え込み系」ですね。

小川:そういう場合は、私ならメンターに相談しちゃいますね。「人の悩みは人にお願いする」みたいな。自分の直属の上司で、信頼できる方がいれば相談してみればいいし、会社外に誰か信頼できるメンターがいれば、その人に相談するのもいいでしょう。

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けれども、そういうメンターがいない場合はどうすればいいのでしょうか。

小川:わりと解決策が出なくても、誰かに話を聞いてもらうだけでスッキリすることもありますよね。話しているうちに自分自身で解決策を見つけていくパターンも多いと思います。

中島:確かに、話してるうちに「これってわりとシンプルな問題だな」と気づいたりとか、「こうしていけばいいんだ」と自分のなかで整理できたりしますね。私の場合は、「この人がメンター」と決めるのではなく、「こういう悩みは○○さんが得意そう」「確かあの人がこういうこと経験してたな」と、悩みによっていろんな人から話を聞いています。

「ママになっても営業」への厳しい道のり

女性の営業職が直面する悩みは、どういうものが多いのでしょうか。

小川:やはり、「ずっと続けられない」という悩みがいちばん多いですね。今は若いから体力もあるし、バリバリ働いてても問題ないけど、結婚、出産とライフステージが変わっていくと、この仕事を続けられないんじゃないか、と。

ママになると、保育園のお迎えや、急に呼び出しがあるなかで、お客さまとのアポイントがある場合に、誰か代わりになる方が行ってくれることは可能かもしれないけど、重要な案件だとそうもいかないこともあります。

最近では上司にもだいぶ理解が広がって、仕事と育児の両立もできなくはないけど、あまり戦力とは思ってもらえずに、任せられるのが小さい案件ばかり。働く人としては、ママも積極的にやりたいけどできないという声をよく聞きます。

そういう話を聞いていると、「営業ママ予備軍」にとっては「将来やっていけるのかな」「そもそも営業しながら子育てしている人がそんなにいないな」と不安になるんですよね。そもそも営業女子って少ないのに、年々同世代が減っていくように感じられるわけですから。

そういう状況を克服して営業職を続けている方は周りにいらっしゃいますか?

小川:実は、「営業部ママ課」という課もあって、最近すごく人数も増えてきているんです。彼女たちの話を聞くと、「大型案件でもきちんと責任を持つので、ある程度任せてもらえますか」と正直に話したり、突発的な保育園からの呼び出しがあっても大丈夫なように、チーム内で常に一緒に動ける人とペアになったり、上司と相談して、仕事と育児を両立しながら働いていますね。

中島:私の会社は女性のMRが多いんですけど、出産や育児を経験して、時短で働いていた女性でも昇進する方がいるんです。新卒で入った会社なので、それが当たり前だったんですけど、勉強会に参加して、他の会社の実情を聞いていると、それが恵まれた環境だったんだなと知りました。

でも時短という環境でパフォーマンスを発揮されている方って、それだけ生産性が高いんですよね。そういう方たちが活躍できる場を広げていくことは、会社の生産性も上がって、メリットも多いと思うんです。

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「営業部女子課の会」では、勉強会や交流イベントなどを開催し、女性営業職のキャリアアップをサポートしている

「私たちが働きやすい環境」は「男性にとっても働きやすい環境」

「個人の努力でなんとかする」というより、「会社に働きかけて変えていく」ことで、営業職として働き続けることができそうですね。

小川:そうですね、ただ、やはり現状では女性の営業職が少ないので、そこまでの大きな動きにならない面はあると思います。

ですから、営業部女子課としてはまず、女性の営業職をどんどん増やしていく。そしてライフステージが変わっても、営業をやっていこうという思いを持った女性を増やしていくことが、私たち自身が働きやすい環境につながっていくのではないかと思います。

やはり、営業ってどんな会社でも業界でも、必要な仕事なんですよね。いくらいい商品やサービスがあっても、売る人がいなければ、何も売れません。

そしていろんな商品やサービスがあるからこそ、女性も男性も関係なく、それぞれのセンスや個性を活かして、営業していく。そのなかで、ひとりでも多くの女性が活躍していってほしいなと切に願っています。

中島:私もまだまだ若輩者ですけど、「女性が働きやすい」ということは、きっと「男性も働きやすい」んじゃないかなと思います。

すべての人たちが夢や目標を持って、やりがい、生きがい、働きがいを持って暮らせる社会になればいいなと思っているのですが、今の私には何もないわけで。でも女性の営業職として働いている私が、営業部女子課で活動して、発信していくことが、今、自分の価値を最大化できることだなと感じています。

会社のなかだけだとどうしても視野が狭まってしまって、気を遣ってばかりになってしまいがちですよね。でも会社以外の関係性を築いて、気がねなくなんでも話せる人がいて、さまざまな価値観に触れられることが、自分自身の成長にもつながっていると思います。

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大矢幸世
2011年からライターとして活動。鹿児島、福井、石川など地方を中心に取材執筆を行う。2014年末から拠点を東京に移し、ビジネス、カルチャー、ローカル、グルメなどジャンルを問わず、ウェブや雑誌、企業誌などで執筆・編集を行う。