東京大学の航空宇宙工学科を出た3人が開発するソリューション「b→dash」はマーケターの仕事をどう変えるのか

次世代型マーケティングプラットフォーム「b→dash」を開発・提供する株式会社フロムスクラッチには、東京大学工学部航空宇宙工学科出身のエンジニアが3人もいます。東京大学で宇宙研究・開発に携わっていたという事実だけで頭脳明晰さが伝わりそうですが、そんな3人が開発者として携わるソリューションとは一体どんなものなのでしょうか。

今回は、その3人である井戸端洋彰さん(写真左)、渡辺典幸さん(写真中)、斉藤健史さん(写真右)に集まっていただき、これまでのキャリアから現在開発を手掛けている「b→dash」、さらには「b→dash」とマーケターの未来について、色々な話を聞いてみました。

東大航空宇宙工学科を出て、外資系コンサル、ITコンサル、陸上自衛隊へ

―――大学卒業時のキャリア選択について教えてください

井戸端:卒業後はアクセンチュア株式会社にエンジニア職で入社しました。入社理由は「良いもの」を作りたかったからです。

私としては、世の中に認められているという点で、売れているもの=良いものだと考え、世の中やビジネスのこと、そしてそれを通じて「良いものとは何か」をもっと知るために、よりビジネスサイドで働けるアクセンチュアを選びました。

斉藤:私はITに興味があったのと、色んなお客さんに会える仕事がしたいと考え、新卒でフューチャーアーキテクト株式会社に入社。入社後はシステムコンサルタントとして3年働きました。

渡辺:卒業後は陸上自衛隊に入りました。きっかけは東日本大震災。これから就活という時期に震災が起き、福島出身の私は自衛隊の活躍を近くで見て、自分も人のためになる仕事をしたいと思ったんです。

それから自衛隊について調べたところ、自衛隊の中にも開発職があると知り、幹部自衛官として入隊しました。

―――具体的にはどんな仕事をされていたのですか?

井戸端:金融系のプロジェクトで、3年間、保守開発をしていました。オフショアを使っているプロジェクトだったので、オフショア先の中国・大連のセンターとやりとりをしつつ、お客さんとの折衝も行いながら、開発業務も担当する日々を3年間過ごしました。

渡辺:陸上自衛隊では、ミサイルを撃って敵の航空機から味方を守る部隊に所属していました。他にも小隊長として部隊の運営や訓練の計画を3年間やっていました。

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現在、渡辺さん(左)は福岡オフィスにいる

ひとつの会社に3年いると、そこにいた時の自分の将来像が見えてくる

―――皆さん3年間働いた上での転職ですが、3年で転職しようと考えていましたか?

井戸端:そもそも転職する気はありませんでした。担当していた金融系のプロジェクトが3年間で一段落し、プロジェクトマネージャーから「異動をするなり、好きにしていいよ」と言われたんです。そのタイミングでちょうどフロムスクラッチに転職した元上司に入社しないかと誘われました。新しいプロジェクトに入ると動きにくくなるので、今しかないと思って転職したんです。

斉藤:僕は全体像が見えてきたことが転職につながりました。このまま出世したら社員に指示する管理職になる姿が想像できたんです。だいたいひとつの会社に3年いると、そこにいた時の自分の将来像が見えてくるものですね。なので僕の場合は、もう少し成長の軸を変えたいと思って転職を決めました。

渡辺:1年目は研修でがむしゃらに色々なことを覚えて、2年目に初めて部隊へ配属。実際に小隊長として1年間働き、3年目以降、どういうキャリアパスがあるのかがだいたい見えてきたんです。

もちろんその先にはやりたかった開発職も確かにありましたが、辿り着くまでに6年必要だと分かりました。しかも開発職に就けたとしても、その後、別の部隊で部隊長として働き、また何年後かに開発に戻って……といったキャリアパス。それだとキャリアの中で半分しかエンジニアとして働けないと分かり、であれば早めに動くべきと考え、3年で転職したんです。

「b→dash」は自衛隊の訓練にも生かせる?

―――現在開発されている「b→dash」の魅力を教えてください

井戸端:本気でデジタルマーケティングをやるには、大量のデータを集めた上で、使える形に整えたり、つなげたりする必要があります。

一方で、使えるデータを作るには時間もお金も掛かるのですが、その時間とお金を大幅に削減できることは「b→dash」の強みのひとつだと思っています。例えば、時間の話をすると、現場の人たちのエクセル作業やデータ収集作業などを「b→dash」で自動化するため、工数が削減されます。お金の話をすると、マーケティングツール全体にかけている予算が削減されます。

今まではデジタルマーケティングをやろうとすると、様々なツールを導入する必要がありました。分析はA社、メール配信はB社など、個々のツールでそれぞれコストが掛かっていたんです。それが「b→dash」であれば、単体で分析もメール配信もできるので、結果的に数百万円くらい掛かっていたツール費が、数十万円になったりします。

斉藤:「b→dash」のデータは循環していくんです。分析結果をメールに生かすと、そのメールで新規顧客を獲得できて、その顧客がどんな行動をしたかが見られる。こんな顧客がこんな行動をしたなら、今度はこういうメールを打ったらもっと喜ばれるはず、といった形です。なのでデータでダイナミックに変化を起こせることが「b→dash」の強みかなと思います。

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修士と博士をJAXAの宇宙科学研究所で過ごしていた斉藤さん

渡辺:データを活用できるのは魅力ですね。前職では自衛官としてミサイルを撃っていましたが、この日はこういう風が吹いていて、標的に向かってどういう角度でミサイルを撃ったというデータはあるものの、それを生かして「どうしたらより良い部隊にできて、より良い訓練ができるか」という分析は誰もできなかったんです。

当時はエクセルで分析をすることもありましたが、限界でした……。なので「b→dash」みたいなツールがあれば、絶対もっと良い訓練ができて、良い部隊ができるだろうと思っています(笑)。

将来、マーケターの仕事はAIに奪われるのか

―――将来的に、AIに仕事が奪われるという話もありますが、「b→dash」によってマーケターの仕事はなくなるのでしょうか?

井戸端:マーケターの仕事は直ぐにはなくならないと思いますが、マーケターの仕事のあり方は大きく変わっていくと思います。

日本においては、マーケターがやるべきこと業務にそもそも時間を割けていません。現状ではただ単に手を動かして作業をしているだけの人が多いのです。管理画面を行き来したり、レポートを作ったり、データを集計したり、そのような業務に時間を割いてしまっています。

本来、マーケティングはすごく広義なもので、企業の戦略や方針に照らし合わせて、集客から興味喚起、セールスまでのパイプラインを考える役割。商品開発や企画広報にもつながる部分で、本来は重要な意思決定をするはずなのに、それができていない。

なので「b→dash」やAIは、業務効率化やマーケターがまだ気付いていない知見を与えるだけであって、マーケター自身はもっとハイレイヤーなことをできるようになっていくと考えています。マーケターを作業員から戦略家へ解放していく役割を、「b→dash」は担っているんです。

斉藤:大企業の場合はマーケティング、企画、広報が縦割りで分かれてしまって、互いに牽制しあう場面もありますが、将来的に自動化が進み、データが一箇所に集まれば、全員で会社の未来を考えることができるようになります。「b→dash」としても、将来的にはその方面を支援していきたいですね。

作業は機械にお任せして、人間は指揮だけする世界へ

―――最後に、今後取り組みたいことについて教えてください

井戸端:データ周りをもっと尖らせていきたいですね。具体的に言うと、もっと大量のデータをよりスピーディーに捌けるようにしたり、データの外部連携をしやすくしたり。

他にも機械学習や人工知能を使って類推した情報を提供してみたいです。「b→dash」にしかできない、多種多様なデータを活用したマーケティング施策の最適化を、自動化させるところまでできると、技術的にもビジネス的にも大きなインパクトにつながると思っています。

斉藤:“売れた”“売れていない”の結果だけでなく、購買に至った人、至らなかった人の生々しいカスタマージャーニーデータを解析して、購買につながる要因や要素抽出をしていかなければ再現性ある施策は打てません。人の行動には必ず意識的にも無意識的にも、その人の考えや感情が表れています。そういったことすらもデータ化し、解析していくともっと凄いことができると思います。

渡辺:自衛隊でも戦術を考える場面が多いのですが、その際、戦術上の判断をするよりも、判断するための情報を集めることに多くの時間を割いていました。

マーケティングもきっと同じで、本当にマーケターがやりたいことは、戦略家として方針を考えて決めること。ただそこに至るまでのデータ収集や加工の部分に手間が掛かる。分野は違えど、自衛隊でもマーケティングでもその手間を減らしたいという思いがあるなと思っています。

人間は作業員ではないので、作業は機械に任せて、人間は指揮官の部分だけをできるようになる仕組みを作れたらと思っています。

井戸端洋彰

東京大学工学部航空宇宙工学科卒。大学時代は国立天文台と共同で超小型人工衛星Nano-JASMINEの研究開発に携わる。大学院修了後はアクセンチュアに入社。2014年、フロムスクラッチ入社。「b→dash」のプラットフォームのデータモデル構築、アーキテクチャの設計、技術選定、アルゴリズム設計、設計開発方針の決定を担う。通称・青森の神童。

斉藤健史

東京大学工学部航空宇宙工学科卒。卒業後は大学院に進学、同時に修士課程時代からJAXA特別研究員(はやぶさのエンジニア)として活動。大学院修了後はフューチャーアーキテクト株式会社にてITコンサルタントとして、原価分析に注力。その後、フロムスクラッチに入社。

渡辺典幸

東京大学工学部航空宇宙工学科卒。卒業後は自衛隊に入隊、陸上自衛隊で小隊長を務めた。陸上自衛隊時代は北海道の駐屯地にてミサイルを扱う部隊に所属。独学によるプログラミング学習に加え、プログラミングスクールでの講習を経て、2016年、フロムスクラッチに入社。