ECサイトならではのUXを高めたい。GUのECサイト担当者インタビュー【前編】

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社会人になってから数年。「自分は今のままで大丈夫だろうか?」「今の環境が不満……」「転職したい」とは思うものの「今の仕事をやり切らないと逃げになるのでは」と思い悩んで悶々とされている方も多いはず。

そこで今回は、GUのダイレクト事業部でECサイトの運営に携わる、伊達寛さん、高津祐司さん、武部真子さんにお話を伺いました。

伊達寛

伊達寛 IT企業での経営企画/事業開発を経験後、ネット広告会社にてオフラインからオンライン化への事業変革に従事。その後グローバル事業統括、M&A経験後、アジア地域における事業開発責任者として東南アジアを拠点に活動。2016年5月、GUに入社。

高津祐司

高津祐司 新卒でファーストリテイリングに入社し、ユニクロ店舗の店長、SV、マーチャンダイザーの経験を経て、2006年GU創業時にマーチャンダイザーを担当。2010年4月にオンラインストア立ち上げに従事。現ダイレクト事業部ECチームリーダー。

武部真子

武部真子 新卒でファーストリテイリングに入社し、ユニクロダイレクト事業部を経験したのち、実店舗での店長経験を経て、GUダイレクト事業部に着任。オンラインストアのコンテンツの運用・ディレクション、システム改修を担当している。

本部でのEC担当→店舗の店長→EC担当という「ブーメラン」キャリア

高津祐司さん(以下、高津):私は1996年に新卒でファーストリテイリングに入社しました。ユニクロのさまざまな店舗の店長として全国を飛び回ったのち、本部でメンズボトムスの商品企画をしていました。GUには2006年の立ち上げから参加。当初はマーチャンダイザーを担当していましたが、2010年にECサイトを立ち上げる際に会社から「ぜひやってみないか」というオファーがあったんです。ECについて一から勉強し、今ではオンラインストアの店長をしています。

武部真子さん(以下、武部):私は2008年の入社です。最初の1年間はユニクロのダイレクト事業部でECまわりの仕事を担当しました。その後ユニクロの店舗に配置され、GUの店舗では店長を経験。そしてGUのダイレクト事業部に配属されて現在にいたります。

編集部注)ダイレクト事業部とは、主にECサイトの運営を担当する部署。ダイレクトメールやクーポン発行、イベントの企画運営などの施策も提案・実行している。

高津:ダイレクトから店舗に行ってダイレクトに戻って来たわけだから、ブーメランだよね(笑)。

武部:そうですね(笑)。今振り返ると、ユニクロのダイレクト事業部のときは表面的なところしか見えていませんでした。つまり、どのように開発されてコンテンツを運用しているかがわかっていなかった。でも、今ではディレクションからシステム改修までやっています。

伊達寛さん(以下、伊達):私はGUダイレクト事業の責任者です。もともとはIT企業で経営企画や事業開発をやっていました。その後はネット広告会社で、オフラインからオンライン化へ事業を変革していく仕事をしていました。

高津と武部は店舗の経験が豊富。一方、私はどちらかというとネットビジネス側の視点からECを見ていく立場です。

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数字を見れば、1to1のコミュニケーションができる

高津:GUのECサイトは、2010年4月21日にオープンしました。当時のメンバーは3人。サイト運営を担当する人と、在庫を担当する人に分かれている程度でした。

その後、店舗運営と同じやり方でECサイトを運用するには限界があると気づきました。店舗の売り上げは、客数×客単価で決まります。ECサイトも売り上げは客数×客単価です。しかし、そこに辿り着くまでにどれだけ流入があってどこのページを回遊しているか、さらには最終的なコンバージョン率も可視化されるんですよね。

武部:実店舗からダイレクト事業部に戻って来たときに、「ネットは店舗よりも、結果に結びつかない原因がはっきりわかるからいいな」と思いました。最初は分析ツールを十分に使いこなせていませんでしたが、運用を重ねるうちに見るべき数値と次に打つべき施策がわかってきたんです。

高津:そう、そういう数字を見ていくと、客数を上げるのは店舗と同じだとしても、その中に新規のお客さまとリピートのお客さまがいることがわかってくるんです。新規のお客さまとリピートのお客さまで単価を比べ、ターゲットごとに施策を打ち出しています。

たとえば、購入した人に向けてメールマガジンを出すとしたら、キッズの商品を買った人にはキッズの新商品入荷のお知らせを送る。1回購入したけれど、しばらく足が遠のいていた人にはクーポンをつける……といった具合です。1to1のコミュニケーションができるというECの強みを活かせるようになってきたと実感しています。

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売り上げを伸ばした6周年の施策

高津:GUのオンラインストアがオープンして6年目を迎えるとき、キャンペーンを打ち出そうと考えていました。ただ、急なシステム改修が重なり、キャンペーン開始の目前でオンラインストアは一時的に閉店してしまうことになったんですね。オンラインストア再開からキャンペーン終了までは6日間しかなかった。でも6周年と同じ数字の「6」に着目して、6日間日替わりでキャンペーンをやろうという企画になりました(笑)。

武部:具体的には、日替わりでGUのベストセラー商品をディスカウントする施策を打ち出しました。これがうまくいき、売り上げは好調でした。

ただうまくいったことばかりではありません。当時リリースされたばかりのシステムを使って、サイトをSNSでシェアするとクーポンを使えるという企画をおこなったのですが、システムの不具合でシェアしなくてもクーポンが発行されてしまったんです。ユーザーからは「どうやってシェアしていいかわからない」「シェアしていないのにクーポンが来た。使えるのか」などという問い合わせが殺到してしまいました。システムも悪かったのですが、シェアまでのUIやUXが非常にわかりにくかったと反省しましたね。

ECを使って、ものづくりのさらにその先へ

伊達:GUのようなSPAはものづくりに命を賭けています。だからこそ、ECサイトにネットビジネスという視点を加えれば、他ECサイトとの差別化を図ることができ、大きな強みになると考えています。ただ、ユーザー視点に立ったとき、競合は他のブランドだけではありません。電車の中で、スマホで友達とコミュニケーションを取っている時間が10分あるとしたら、そのうち2分をGUのサイトを見ることに使ってもらえるようにしなければいけない。そのためには、「オンライン上にある店舗」以上の価値を付加していかなくてはなりません。

武部:GUの実店舗は日本国内だけでも300店舗以上あります。そのため、施策ひとつとっても実行には思い切りが必要なんですね。一方、ECサイトはウェブ上に1店舗のみ。非常に柔軟に、素早く施策を打ち出せます。事実、GUの実店舗への施策やアプローチを試すとき、社内でも真っ先に「ECサイトでテストしよう」という話が出てくるようになってきています。

高津:店舗ではマネキンの数や空間が限られているから、単品の商品は見せられても組み合わせの提案が物理的に難しいという欠点がある。一方、ネットはそういった制約がありません。いろいろなスタイリングを提案できます。雑誌が担う役割を、ECサイトが果たすようになりつつあるのかもしれません。

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オンライン上ではGUの商品を使ったさまざまなコーディネートを紹介している

武部:かつて、多くの人は雑誌を見て目星をつけてから服を買っていましたが、現在はウェブを見てから店舗に行く人も多いんですね。事実、「ウェブで商品を見て、実店舗での販売を楽しみにしていました。実店舗で発売されて嬉しいです」というお客さまのコメントもあるほどです。

「横」の雑誌、「縦」のEC

伊達:ファッションのECには、他のECと違うポイントがあるんです。

ひとつはサイズ感。服は着てみないと、自分にあうかわからないところがボトルネックになってしまっています。しかし、VR技術を使って擬似試着体験できるようになれば、自分にぴったりかどうかを確認したり、ちょっと大きめだったらどうなるのかイメージできるようになります。

もうひとつはコーディネートの多様性です。自分にとっての定番コーディネートから新しいものに挑戦するのはなかなか難しい。でも、ECサイトは組み合わせをどんどん提案できる。一個人の「定番」を超えて新たな着こなしにチャレンジしたくなるような施策を打ち出していきたいです。

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最後のポイントは「レコメンデーション機能」です。レコメンデーションといっても、ECサイトでよく見る「ある商品を買った人はこれを買っています」という、単なる統計上の情報だけではあまり意味がありません。実店舗の満足度が高い理由は、悩みをきちんと聞いて、その上で商品を提案してもらえるからだと思うんですよ。どんな技術を使うかはまだ構想を立てている段階ですが、本当にオススメしたい商品に近づける仕組みを作りたいと思っています。

また、雑誌はいろいろなコーディネートがあって、ブランドの特集が出ていて、コスメも紹介されている。雑誌のコンセプト内で幅広いブランドや情報を扱うのが得意なメディアです。つまり横のレコメンデーションが中心になります。その分、ユーザーの興味が他のブランドにも移ろいやすいんです。

一方、ウェブは、ワンクリックで買えて、翌日配送してくれて、注文した後はレコメンドが来て、また買いたくなって、という単一のブランドにおける縦のレコメンデーションで完結するメディア。ユーザーの興味が他ブランドへ移ることは少ないと考えられます。

ファッションは、買う服を選ぶ楽しさ、買った服を他の服と組み合わせる楽しさ、買った服を着る楽しさ……さまざまな状況でわくわくさせるものです。UIやUXを向上させ、お客さまの心がより弾む購買体験を提供していきたいと考えています。