財閥系商社マンが伝えたい海外勤務の真実

日刊キャリアトレック編集部が海外勤務の経験がある若手ビジネスパーソンに海外で働くまでの話や海外での仕事について聞いてみました。

今回お話をしてくれた方:太田さん(仮名)/明治大学卒/総合商社 → ベンチャー企業

新卒で入社したのは財閥系商社。「総合商社」と呼ばれている会社です。

数十年前までは、ビジネスの仲介手数料や金融手数料が主な収益源でしたが現在では自分たちで事業を展開しており、「総合事業会社」といっていいと思います。

原油や石炭、鉄鉱石などの資源開発から、食品卸や子会社を通じたコンビニ事業まで展開。あまり知られていませんが、他にも自動車産業ではメーカーからディーラーまで経営し、世界的な販売網を築いています。

収益になりそうな分野に積極果敢に進出していくのが、商社の良いところなんです。

海外勤務を希望したもののコンビニ担当に

商社を志望したのは、海外でのビジネスに携わりたかったからです。

大学時代の海外生活で、日本国内とはまったく違う文化に魅せられました。若いうちに積極果敢に海外に打って出て、ビジネスに取り組みたいと考えたんです。

しかし、入社後最初に担当したのは小売り事業。出資先のコンビニの売り上げ増加を狙った商品開発をやったり、コンビニを軸においた新規事業の開発に取り組んだりしました。

海外勤務を望んでいた私は、上司や人事部へ何度も異動願を提出しました。

自分を海外に行かせれば必ず会社にメリットをもたらす、なんて熱を持って人事部を説得。しつこく繰り返した訴えが実ったのは、入社4年目のことでした。

赤道ギニアに転勤、交渉力が求められる世界へ

ただし、海外勤務には会社から条件がつけられました。

それは過酷な勤務地でも受け入れる、というもの。承諾した私は原油の鉱区を獲得する部門へ配属され、アフリカ中部に位置する国、赤道ギニアの首都マラボへ転勤することになりました。

マラボでは、原油の鉱区獲得のために奔走。赤道ギニアには有望な原油の鉱区があり、すでにアメリカの石油大手も進出していました。私たちは私たちで独自のルートで現地政府に働きかけてもらいながら、鉱区獲得を目指しました。

海外でのビジネスは、ただ単に真面目に交渉すれば成功できるわけではありません。とくにその国の最高権力者がビジネスの最終決定権を握っている場合は、国際政治と同様の感覚と厳しさをもって行動する必要があります。

交渉は綺麗ごとだけではすまされません。相手が何を望んでいるかを察知する能力が求められます。相手が望むことを叶えつつ、こちらにも利益をもたらす形で契約締結にこぎつける。そうした交渉力が必要なのです。

略奪行為にクーデターの噂……命を危険にさらす駐在体験

そんな赤道ギニアは治安が悪く、生活するのに苦労しました。

現地では大統領による独裁政治が続いていたものの、軍事クーデターの噂が絶えず、不安がつきまとう日々。

自衛手段を持たない私たち商社マンは、行動範囲もかなり制限されていました。居住エリアの外では反政府勢力が略奪を続けています。そのため、セキュリティが万全で、傭兵によって守られているエリアから外へは一歩も出ることができなかったんです。

休日も、数人の同僚と酒を飲むくらいしか選択肢がありません。実はそれも大変でした。

海外勤務を目指す上で必要なのは、強靭な精神力です。とくに治安の悪い国では、警察力や防衛力が脆弱な場合があります。そういった国で駐在勤務をすると、自分の生命を危険にさらすこともあります。

何が起きても動じない精神力と、対応する力が必要です。

豊かになるはずだった国で目撃した悲惨な現実

現地では悲惨な現実も目の当たりにしました。赤道ギニアは原油の採掘が始まり、国家として豊かになっているはずでした。

しかしその豊かさは、一般国民にまで行き渡っていなかったのです。家庭には電気が届かず、安全な水を飲むことのできる国民もごくわずか。

子どもたちは満足な教育も受けられず、道路も整備されていませんでした。政府主導の計画的な食料生産、食料の輸入が実施されなかったため、飢餓に苦しむ多くの国民を目撃しました。

日本で暮らす人々の境遇と比べて、赤道ギニアの人々が置かれた境遇はなんと悲惨なのかと胸が痛みました。

大手商社から一転、小さな会社で上場を目指す

いまは転職し、別の会社で新規事業の立ち上げに携わっています。

大手商社とは比較にならないほど小規模な会社です。部長として、複数のビジネスを黒字化するために日夜悪戦苦闘しています。

今後の展望としては、黒字化しているあるビジネスの売上を30億円程度、利益水準を3億円程度にまで伸ばすことです。

そのタイミングで分社化し、マザーズ市場に上場することを目指しています。いまはその目標に向かって動いています。なんとしても実現させたい夢です。

(了)

日刊キャリアトレック編集部
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