「世の中の役に立つ仕事がしたい」2社+αを経てメディカルノートを選んだエンジニアのキャリア

2016年末、インターネットで公開される医療情報の信憑性をめぐり、メディア業界は揺れました。企業のマネタイズのために、専門家のチェックが入らないまま記事が量産され、発信されているという実態に業界のみならず、多くの方が衝撃を受けたことでしょう。

2015年の3月にローンチした医療メディア「Medical Note」は「医師による確かな情報発信」をポリシーとし、専門医によるクオリティーが高い記事を公開し、他の医療メディアと一線を画しています。

前編では、運営元の株式会社メディカルノートの取り組み、中編では同社のCEO・木畑宏一さんのキャリアを紹介しました。今回は同社でCTOを務める河本穣さんに、キャリアについて伺います。

DeNA、外資、フリーランスを経てメディカルノートへ

メディカルノートにジョインするまで、数回キャリアの転機が訪れました。

28歳、新卒エンジニアとしてDeNAへ入社

元々大学院でデータベースや検索エンジンの研究をしていました。「学生と研究者の中間で半端な存在だな」という気持ちや、収入面の不安もあり、就職してキャリアを積もうと決意。28歳で新卒としてDeNAに入社します。

現在ではソーシャルゲームのイメージもあるDeNAですが、入社した2008年ごろはモバゲーなどのモバイルコンテンツで結果を出していました。急成長している企業に身を置いて、自分を鍛えたいと思ったのが入社のきっかけです。入社から1年は検索エンジンの開発・運用を行っていました。2年目からは新しいサービスのリリースや、大規模Webサイトのパフォーマンスチューニング、大規模プロジェクトチームの開発者の生産性を向上させる環境構築、移行プロジェクトなど幅広い業務を担当しました。

フリーランス時代に仕事の幅を広げる

期待していたことはおおむね経験できたなかで、環境に不満はなかったのですが、より大きなチャレンジができる仕事を任せてもらえる話をいただき、EA(エレクトロニックアーツ)という外資系ゲーム開発会社に転職。1年半ほど働いた後はフリーランスになりました。

フリーランスになったころから、自分の仕事の幅を広げることを意識し始めました。自身のホームグラウンドをサーバー開発に置きつつ、インフラ構築やフロントエンド、サービスのUI設計、ディレクション、エンジニアがいない会社の組織づくりなど、ソフトウェア開発以外のさまざまな仕事に取り組みます。

そんな時、元同僚で現在は弊社のプロダクト統括を担当する須山に「面白そうな会社があるよ」と教えてもらい、メディカルノートの存在を知ります。彼が「面白い」というものなら、やってみる価値はあるかなと感じました。

「暮らしを良くするもの」に惹かれるようになった

メディカルノートに入社した理由の一つに「世の中の役に立つ仕事がしたい」という思いがあります。ゲーム産業は好きなのですが、趣味のものよりも暮らしを良くするものに惹かれるようになりました。

学生時代にも同じような経験をしています。データベースの研究を始める前は政治学の研究室にいたのですが、当時は研究自体に価値があるとは思いながらも「自分がこれを勉強することによって世の中に何か変化があるだろうか?」と常々感じていました。一方で自分が好きなことであり、かつ社会にインパクトを与えられそうだというビジョンが見えたのが検索エンジンやデータベースだったのです。

正しい情報が伝わることで患者さん、ひいては世の中の役に立てる。メディカルノートでなら、自分の技術で貢献できるのではないかと思いました。

プロダクト開発に専念できる環境をつくりたい

CTOとして入社してから半年。自社でサービスを開発・運用できるチームづくりが、私の大きな役割でした。

1人目のエンジニアとして入社

メディカルノートでは私が1人目のエンジニア。入社後はMedical Noteの運用を内製化するための移管作業から始まり、チームづくりや採用面接も担当しています。この半年で、開発メンバーは8名まで増えました。年齢層は20~40代とバラバラですが、みんな「医療を良くしたい」というビジョンに共感するメンバーです。

現在の中心業務はチームづくりですが、別のリードエンジニアとともに新規プロダクト開発も行っています。私はもちろんエンジニアリングが好きですし、技術に自信もあるのですが、現在はマネジメントなど他の部分に注力するようにしています。

SaaSを積極的に活用、開発・運用に専念する

プロダクトの価値を生み出すために、快適な開発・運用の仕組みづくりも重要視しています。少人数、小メンテナンスの運用のために費用対効果が高いものなら外部サービスもうまく活用するというのが基本方針です。

たとえばGitHubのほかNew RelicやSentryなどSaaSの活用はもちろん、本人指定のスペックマシン支給、リモートワークなど、開発者の生産性向上に力を入れています。

「手間をかけて物事を解決する」というアプローチは必要性の高いものに絞り、自分たちだけにしか生み出せない価値のあるものにのみ取り組むことが大切です。

取り組みへの工夫や改善を楽しむことが大事

課題もあります。そのひとつが、プロダクトによっては担当エンジニアが1人になってしまっていることです。意志決定が早い半面、1人では思い切って大がかりな手を打ちづらいこともあります。1人での開発に孤独感を覚えることがないよう、チームとしての文化醸成にも力を使っています。

逆に開発の裁量が大きく「こうしたほうが良いかな?」とプロダクトを改善する余地があるということでもあります。トップダウンで決めきれないことが多い分、自分から工夫を提案したい人には楽しめる環境なのでは、と感じています。今のチームメンバーはサーバーサイドもフロントもできるので、無茶をお願いしてしまっているかもしれません。でも、みんな頑張って取り組んでくれています。早く複数人で開発できるような環境を整えたいですね。

現在は複数のプロダクトを開発し、効果を測定しているフェーズ。さまざまなプロダクトがありますが、事業をバラバラに行っているのではなく、どれも医療情報に結びついています。今春も、新しいサービスをリリース予定です。

今後の目標は、スタッフの人数が10~30人の規模になってもより良いプロダクトづくりができる環境をつくっていくこと。チーム規模が大きくなってきたら、エンジニア自らのアイディアをもとにしたプロダクト開発も手掛けていきたいと考えています。

河本穣 株式会社メディカルノート CTO

慶應義塾大学大学院にて博士(政策・メディア)を取得。医療分野文書の検索エンジン技術等についての研究に従事。大手インターネットサービス企業、外資系ゲームスタジオ等で7年間、ソフトウェア開発者として勤務したのち独立。フリーのソフトウェア開発者、技術顧問、システムアーキテクトとして約2年半活動後、2016年8月メディカルノートにCTOとして参画。