「泣きながら下校していた」忍耐が成功を生み出す。マネーフォワードCEO・辻庸介さんが苦難の中で学んだこと

株式会社マネーフォワードのCEOとして、大活躍中の辻庸介さん。京都大学卒業後、ソニー株式会社へ入社。マネックス証券CEO室に出向した後、ペンシルバニア大学ウォートン校にてMBAを取得、その後起業しています。一見すると順風満帆なキャリアを歩んできた辻さんですが、意外にも波瀾万丈なその人生を語っていただきました。

やりたいことはどんどん発信する

大学は農学部。土に還る自然に優しいプラスチックの研究をしていましたが、ビジネスをやりたいなと思ってソニーに入社したんです。そうしたら「お前理系だから数字に強いだろ」という安易な理由で経理部に配属になっていました。これ、人事の責任者から聞いたので多分本当です(笑)。

その頃は社会人として何もできないので、まずは生きようと思い頑張ったのですがやっぱり何か違うな、という気持ちを抱えながら3年くらい仕事をしてました。

ソニーには社内募集という制度があって、イントラネットで様々な部署の人材募集が出ていて、上司に内緒で応募できるんです。そこで当時の先輩がある募集を見て「辻くんこれ向いてるんじゃない」と勧めてくれたのがマネックス証券CEO室の仕事でした。

仕事は日々の意思決定の積み重ね

マネックスのCEO室で僕のボスになったのが、松本大さん。当時史上最年少の30歳でゴールドマン・サックスのグローバル役員になった伝説の人です。僕はそういう人って、最初からできる人なんだと思ってたんです。でも松本さんは本当に毎日すさまじい努力をしてきた人。彼を見ていて、仕事は日々の積み重ね、意思決定をどれだけ繰り返すかなのだということを学びました。

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MBAで学んだことは「ストレス耐性」

その後、海外で一流とされる人間がどんなものか体験したいという思いがあり、ペンシルバニア大学のウォートン校でMBAを取得することにしました。

MBAは本当に辛かったです。コミュニケーションが英語なので言ってることがわからない。日本で勉強してきたような教科書通りの整った英語ではなく、生の英語だからぐちゃぐちゃなんです。すごく悔しくて、橋の上で泣きながら下校していました。学校行きたくない、と言って妻に怒られたりもしました(笑)。

MBAって、わざと耐え切れないような量のタスクに無理なスケジュールを組んでチームに課すんです。チームが正常以上に機能しないとアウトプットはできないし、個人の評価も全然されない。そして下位5%は放校処分。だいたいそうなる前に鬱で辞めていくんですが、それくらいきつかったです。

それでも最後はみんなの投票でクラス代表に選んでもらって、いい思い出になりました。英語がわからなくて泣きながら帰ったあのとき、本当に学校に行かなくなっていたら、今のマネーフォワードはないかもしれません。MBAでは経営の知識もつきましたけど、一番身についたのはストレス耐性です。

障壁は、越えれば味方になる

そんな感じで勉強はもうお腹いっぱいだったんで、何か人の役にたつアウトプットがしたいなと思ったんです。金融の領域が長かったのと、ITとの組み合わせだったら何か面白いことができるかもしれない、と思って起業しました。

僕たちは面白かったんですけど、最初は誰も信じてくれないですし、人もお金も集まらない。パッションだけでやり始めましたが、何も見えていませんでした。偉そうに「こうやってマネタイズするんだ」とか言ってましたけど、実際どうなるかわからないなと思っていました。目の前のサービスをよくすることだけ必死で考えていたんです。

ベンチャーはアイデアを現実化する過程でいろんな障壁にぶつかります。でも、その障壁が高ければ高いほど本当はラッキーなんです。なぜなら越えるのが大変な障壁は、越えたときにそのまま参入障壁になるので、他の人が入ってくるのを防いでくれる。だから障壁があってもなんとか越えるように頑張ろうと思っていました。

困難なことほど本当はチャレンジすべきなんです。

人間関係、キレたら負け

資金調達をしようと思っても、VCには基本的に断られまくるわけです。でも、こちらが失礼な態度を取らないっていうのが大事なんです。次のラウンドになればまた同じ人に話しに行ったりするんですよね。そのときはご縁がなくても、また繋がるかもしれません。

相手が言っていることには、何かしら合理的な理由があるんですよね。だからそれを理解して、飲み込むことが必要だなと最近思います。人間関係って、キレたら負けですから。

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未来が見えなくても、目の前のことに一生懸命になれ

僕がこんな話をするのは恐縮ですが、スティーブ・ジョブズもスタンフォードでのスピーチで「コネクティング・ドッツ」って言ってますよね。好きで受けていたカリグラフィーの授業が、マッキントッシュの美しいフォントに繋がったと。

僕の場合も、嫌で嫌でしょうがなかった経理の仕事が今のマネーフォワードの根底にあります。僕らは今、クラウド会計サービスを作っていますが、それは僕が怒りを抱えながら取り組んでいた経理の面倒さを全て自動化してやろうと思ってやっているんです。だからすごく説得力があるんですよ、サービスに(笑)。

あのときはあんなに嫌だったけど、まさか将来会計システムを作ることになろうとは夢にも思わなかった。本当に面白いですよね。

全てを計画することはなかなかできません。だからこそ、月並みかもしれないですけど、目の前のことを一生懸命やるのが大事だと思っています。

辻庸介さん

京都大学農学部卒業後、ソニー株式会社に入社。2004年、マネックス証券出向(その後転籍)。2009年、ペンシルバニア大学ウォートン校に留学。帰国後COO補佐、マーケティング部長を経て、マネーフォワード創業、代表取締役社長CEOに就任。