仕事ができる人の習慣を知りたい。美容師・木村直人さんの場合

 “習慣”は人を作るもの。とくに現在まで長期間かつ継続的に行っていることは、その人にプラスの影響をもたらす良い習慣といえるでしょう。本連載では、社会の第一線で活躍するビジネスマンの先輩たちに、20代の頃から今まで継続している良い習慣を10個紹介していただきます。
 第4回目に登場いただくのは、芸能人や著名人顧客を数多く持ち、ブログ寄稿などメディアを通じた発信も支持される、air/LOVEST に所属する美容師の木村直人さん。木村さんが心がけている10の習慣を聞きました。

1.一番を目指す

 若い頃は死ぬ気で仕事に取り組んでいました。キャリアを上げていく方法って、本当にシンプルなんです。いろいろな物事を誰よりも多くやれば良いだけ。僕は誰よりも早く起きて、遅く寝て、数をこなして、人の意見を吸収し、考え続けてきました。そのサイクルを繰り返していれば、目標は達成できます。
 基本的にはミーハーマインドで業界に入り、最初は「注目を集める人になりたい」という漠然とした目標を掲げていました。それを成就させるにはどうすれば良いか考え、一つひとつ地道に達成してきましたね。

2.自己分析する

 僕のお客さまである、経沢香保子さんはあちゅうさんのブログで「キム様に髪を切ってもらうと運気が上がる」と書いていただいています。ありがたいですね。ただ、僕はもともと「女性はすがる何かを求めている」と考えていました。

 「このサロンに行くと(この美容師が担当すると)恋が叶う」と謳うサロンってありますよね。じゃあ、僕はどういう美容師だろうかと、あるとき自己分析をしてみました。すると、昔から芸能人の卵のような知名度が低い方を担当することが多く、その後皆こぞって有名になっていったんです。「そういう(人の運気を上げる)ものを持っているのかな」と考えながらも、口には出さずにいました。
 初めて意識して口にしたのは、はあちゅうさんを初めて担当したときです。当時から彼女は有名人でしたが、今ほどのスーパーブレイクはしていなかった。そのとき僕はヘアスタイルを考えて提案しましたが、それだけでは彼女の心を動かせなかったんです。だから「僕に髪の毛を切らせると、仕事運が上がるよ」と、これまでの根拠を初めて提示しました。それが彼女の「なりたい自分像」と合致して、心にささったんでしょう。

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はあちゅうさんBefore
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はあちゅうさんAfter(※こちらの画像ははあちゅうさんご本人(@ha_chu)に許可を得て掲載しております。)

 それからお客さまとして定期的に来店していただいていますが、今まさに大活躍されていますよね。自分がどういうものを持っているのか、自己分析をして、相手に伝えることは大事だと思います。

3.コミュニケーションのストレスをためない

 ハードワークな職場で仕事をし続けていると、息が詰まってしまうこともあると思います。だからこそ、ストレスをためない努力をしてきました。僕はとくに対人コミュニケーションにおいて、ストレスを蓄積したくないと感じています。
 対策としては、思ったことをストレートに伝えるだけです。お客さまに対してもそう。それで「相性が合わない」と思われても仕方がないと考えています。昔の僕は、お客さまの言うことを全て受信する美容師でした。それだと自分のやりたい技術やサービスを提供できず、ストレスがたまるんですよね。
 たとえば、お客さまに”ヘアカタログに載っている、違うサロンの方が担当したモデルさんの写真”を見せられて「この写真みたいな髪型になりたいんです」と言われたとします。それに対して僕は「じゃあ、そこのサロンに行ってはいかがですか」と言っちゃう。正論ですけど、そんなことを言う美容師はいないせいか、お客さまは「木村さんって変わってるな」と感じるかもしれません。でも、率直に発言するようになってから、施術後のクレームは圧倒的に減りました

4.仕事を持ち越さない

 昔から仕事を残しておくことが嫌いなんです。たとえば、来週までにすれば良い案件があっても、思い立ったタイミングで終わらせてしまいます。メールでも何でもすぐに返しますね。普通の人なら「一回持ち帰って検討します」というようなものでも、即レスすることを心がけています。

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5.インプットし続ける

 常にニュースや有識者のコメントを吸収し続けて、柔軟な発想ができるよう努めています。社会には妊娠・出産、恋愛・結婚など、センシティブな話題や問題が多くあるので、知識がないあまりに心ないことを発言してしまうのを避けたいんです。
 情報収集はSNSやニュースなど、ネットで追うことが多いですね。常にインプット・アウトプットが適切にできている方を、慎重に取捨選択してフォローしています。本も読みますよ。

6.固定観念にとらわれない

 美容師はともすれば自閉的になりがちな職業です。業界内の固定観念から発想することが多いなと、業界特有の「閉じている感じ」に、情報をインプットする過程で気づきました。業界の時間軸が社会のそれと比べて、進むスピードが明らかに遅いなと。だからこそ、既存のルールや考えにとらわれず、小さなトライ・アンド・エラーを続けて、美容師という「枠」を意識しない活動をしてこられたのだと思います。

7.アウトプットし続ける

 毎日ブログやSNSなどインターネットを通じてアウトプットしています。ネットはiモード時代(2000年頃)から使っていて、ブログを書くようになったのは2007年頃からですね。いざ書き始めてからは一日も欠かしたことがありません。よく「ブログが続かない人」から相談を受けますが、続かない原因は「何かを狙っているから」だと思います(笑)。
 僕は何も狙っていないから続いているんです。フォロワーを増やしたい、ファンに対してビジネスをしたい、ブログを見た方に来店してほしい、といった狙いはなくて、ただ「ブログには自分の思ったことや記録を置いている」だけ。「発信」というのとは違うと思います。狙って書いていると、息苦しさを感じるのは目に見えています。力を入れないことも大切だと思いますよ。

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8.自分だから語れることを語る

 ネット上で発言していると、炎上リスクについて考えないわけにはいきません。ただ、気をつけてさえいれば、基本的に炎上することはありません。「お前が言うな!」と思われる内容をアウトプットしたときが危険。
 具体的には、自分とは関連性のない話題、社会の中でもセンシティブな問題を切り口にして、鋭い意見を言うと炎上可能性が高まるでしょう。僕は自分が専門とする美容にまつわる話題しか、辛口に書くことはありません。だから炎上しない。自分の業種や生活環境に関する物事だけに、言及すれば良いんです。たとえば、僕が独身者だったときに、結婚についてアレコレ言っていたら、炎上していたと思いますけど……。自分にとって身近な話題を出す意識づけはしていますね。

9.背景や裏側まで見る

 来店してくださって、その後ネット上でやりとりしたお客さまのSNSはフォローして、適宜チェックしています。もし次回来店時までにネガティブなことを発言していたら「バサッと切りましょう」と提案できますし、お客さまの心模様を知るのに最適なツールです。
 ヘアスタイル作りには、ちゃんとした根拠があるんです。基本的には、お客さまが今何を考えているのかをネット上で知り、リアルでお会いしたときに話を聞いて、それらの情報を噛み砕きながら、こうすればもっと魅力が高まると考えて提案しています。

10.聞く努力をする

 今現在の目標は、人を育てたり、サロンをより多くの方に知ってもらったり、といったところに向いています。10歳以上も年の離れた子たちを教育しているので、相当なジェネレーションギャップが発生していますよ(笑)。だからこそ、彼女たちが今思っていること、考えていることをいかに噛み砕けるか、がキーワードです。そのために、まずは彼女たちのことを知ろうとする姿勢が必要になる。
 人は歳を重ねる度に年下の相手に対して、自分の意見や考えを押し付けてしまいがち。でも、そうではなくて、まずは聞く努力をすべきです。聞いた上で自分の言葉を吐き出せば良いわけで。僕は彼女たちが言葉を発しやすい環境を、できるだけ作っているつもりです。
 自分が歩んできた道のりを継承させる=教育ではありません。時代は刻々と変化していますから。「良いところを伸ばす」とはよく言われますが、まさにそれが重要なのかなと。十人いれば魅力や個性は十通りあるわけで、特性を生かしながら後進たちを育てていけたらなと思っています。

まとめ

 生活習慣は5年後、10年後の自分に響いてきます。地味な習慣でも、意識して毎日続けることが大事。この機会に、今一度自分の生活環境を見直してみてはいかがでしょうか。

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木村直人さん

美容師。air/LOVEST SN.Div.Manager。「上質、洗練」をテーマに、斬新な価値観で世の中にトレンドを発信し続けてきた。美容師業にとどまらず、LINEスタンプディレクションや美容メディア構築など、サロン外でも幅広い活動を行う。著書に『ハラドキッ ヘアスタイルBOOK』がある。

フリー編集者・ライター。岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。