仕事ができる人の習慣を知りたい。鎌倉新書社長・清水祐孝さんの場合

 “習慣”は人を作るもの。とくに現在まで長期間かつ継続的に行っていることは、その人にプラスの影響をもたらす良い習慣といえるでしょう。本連載では、社会の第一線で活躍するビジネスマンの先輩たちに、20代の頃から今まで継続している良い習慣を10個紹介していただきます。
 第6回目に登場いただくのはいい葬儀いいお墓いい仏壇Yahoo!エンディングなどライフエンディング全般のWebサービスを提供する、株式会社鎌倉新書社長の清水祐孝さん。清水さんが続けている10の習慣を聞きました。

1. 先輩経営者から本音を聞く

 若い頃、情報誌の取材のために自ら経営者にインタビューをしていた時期がありました。そんなある日、取材先の社長から夕食の誘いをいただきました。いざお酒を酌み交わすと社長はインタビューの時とは一転。「昼間は話せなかったけど、実はウチの会社ボロボロなんだ」「もうメチャクチャ大変なんだけど」とリアルな状況を包み隠さず話してくれました。それは、昼間の仕事としての取材で伺ったどんな話よりも生々しく、ビジネスに役立つヒントが満載でした。
 社長たちとお酒をご一緒する関係ができてからは、気安く話せるばかりか、多くの情報も得られるようになりました。私はもともとお酒はそれほど飲むタイプではありませんでしたが、この経験から重要な社長の取材は極力夕方に入れ、その後食事をご一緒して本音を聞くことを心がけました。

2. 後進にはあえて「何もしない」

 自分の後進に尽くしすぎると、かえって彼らの適応力を下げてしまうと思っています。世の中は常に変化しているので、いつまでも同じビジネスのやり方で食べていけるわけではありません。そう思ったのは事業承継をしたいという経営者から相談を受けたときのこと。その方は「盤石な基盤を作ってから子供に引き継がせたい」と言います。多くの優秀な経営者は同様のことをおっしゃいます。
 しかしそれは間違っています。盤石にすればするほど、事業を引き継ぐ子どもは何も経験できなくなってしまう。苦境に陥り、もがき苦しむ経験がその人を育ててくれるのにそんな経験を親が回避する。世の中は常に変化し、顧客のニーズも変化し、それに伴って事業も変化しなくてはならないのに。子供に楽をさせたいと考える優秀な経営者がいる一方で、私の父は真逆でした。借金を作っているのにオフィスで寝ている(笑)いやー夜眠れないんだよー、ってもういい加減にしてよ!って思っていました(笑)。でも、何も与えられないから自分が考えざるを得なかった。善意に解釈すれば、これも父なりの教育だったのかも知れません。
 経営者だけでなく、社内の上司と部下でも言えることではないでしょうか。何もできない後輩に手を差し伸べてしまうことは、本人の大切な経験を奪う行為です。どんなにかわいくても与えすぎないことが必要だと思います。でも、これがなかなか難しい。

3. 一つの領域を究める

 今の鎌倉新書は葬儀やお墓などにフォーカスしていますが、もともとは仏教に関する専門書を出版していました。そこから隣接する葬儀や仏壇、霊園といったマーケットに目を向けてビジネスに取り入れました。その後は書籍だけでなくセミナーやコンサルティングも手がけて、現在はポータルサイトも運営しています。
 外に目を向けると、あの領域もやりたい、この領域もやりたい、ここも知りたいとは思います。しかし、ひとつの領域を究めるのに30年も50年もかかる。いろんな領域の専門家になるには圧倒的に時間が足りません。ですから専門外の領域についてはその領域に命を賭けてきた人の知見を教えてもらうしかありません。セミナーや読書を通じて、専門家やプロフェッショナルの視点や考えを自らの専門領域に生かせないかなと常に考えています。

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4. 厳しいことを引き受けざるを得ない環境に身を置く

 親に「手伝ってほしい」と言われて会社を継ごうと思った理由はいくつかあります。そのうちの一つが、大企業での限界を感じていたから。サラリーマン時代の上司が優秀な方だったのです。彼はあてもないのに「やります」といって上司に報告して、翌日を迎えます。チームがなかなか目標達成できないときも、残りを全部仕切って営業目標をクリアしていました。自分にはここまでの才覚はないし、人間の度量が全然違うなと思いました。
 会社を引き継いだときは、逃げずに必死になって働きました。なんて偉そうなことを言いたいのですが、実際はサラリーマンとは異なり逃げ道がありません。怠け者の私にはそれが良かった(笑)。そこで、雑誌の取材から編集、営業や新規事業の立ち上げ、さらには経理マンまで一人でやってきた。一人で何役もこなしたときは本当にしんどかった。ですが、その苦労が成長への最短ルートであり、今があるのはこうした時期があったからこそだと思っています。

5. 人参とリンゴのジュースを飲む

 前述のような経験から、他人様と食事を共にすることがクセになりました。そんな中で暴飲暴食を続けたせいでしょうか「いつ通風になってもおかしくない」と脅かされました。そこで毎朝人参とリンゴのジュースを飲みはじめることに。特別な飲食の制限をしなくても尿酸値が下がり、今はなんとかやっていけています。
 5年前からは運動不足解消のためにランニングもはじめました。朝に皇居のまわりを1周し、近くの神社で手を合わせてから、家に帰ってシャワーを浴びる。どんなに忙しいときでも2日に1回は走るように心がけています。いい一日のスタートが切れますよ。

6. 経済誌に目を通す

 証券会社に入社した23歳の頃から、複数の経済誌に目を通すようにしています。東洋経済にダイヤモンド、日経ビジネス、エコノミスト……30年間読み続けています。お客様と日々の経済について話をするために読み始めましたが、最初はチンプンカンプン(笑)専門用語は難しくて内容も分からない。でも5年、10年と読み続けるうちにだんだんニュースの流れが掴めるようになってきました。今では経済誌がないと禁断症状になる(笑)。おかげでビジネス観を養うことができたように感じます。
 朝に新聞を読むのも大好きなひと時です。今ではネット上でもたくさん情報が仕入れられますが、自分で考えるには紙の新聞をめくるのが一番。記事を読んで自分で考えた意見を持ちましょう。その意見が正しいかどうかは二の次で、自ら考える習慣が大切です。

7. 自分の強みを意識する

 20代の頃は、有名企業に勤めたり親の大会社を継ぐ同級生を見てうらやましいと思ったこともあります。しかし今はどうでしょう?世の中が変わりニーズが変化する中で、それに対応できなくなってしまう友人も少なくありません。
 現代のインターネット社会は変化のスピードが著しく早く、これからは50年続く会社は稀有なものとなるでしょう。たとえば私が社会に出た30年前に、13あった都市銀行も今は4つに減りました。会社が一生雇用を守ってくれる時代はとっくに終わっている。ですから自分の強みをどこに求めるのかを設定することが重要です。自分だけが持っている武器さえあれば、未来がどんなに厳しくても生き残っていくことができるでしょう。私は親のつくった会社の借金を返さなきゃいけない、家族を養わなくてはならない、社員を路頭に迷わせるわけにはいかない、といったプレッシャーがさまざまな経験を生み、結果的に自分にしかない武装ができたように思っています。

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8. 祖先に感謝する

 当たり前ですが、今の日本があるのは私たちの先輩たちのおかげです。私自身は戦争に行ったわけでもなく、自らの命が危機にさらされた経験もありません。こんな豊かな生活ができているのは先輩たちの努力があったから。そんな思いから毎月1度は神社で手を合わせます。
 以前ダイエーの中内㓛さんの体験談を読んだときは胸を打たれました。壮絶な戦争体験で生き残ったこと自体が不思議という運命の中で、死んで行った仲間たちに対する申し訳ないという思いと、どうせ失われていたはずの命という思いが強烈なエネルギーとなって戦後の日本経済の一翼を担ってこられた。中内さんだけではなく、強烈なエネルギーで日本の復興から高度成長を引っ張ってきた先輩方や、戦争で犠牲となった人々、こうした方々への感謝の気持ちは忘れないでいたいです。

9. 神社に足を運ぶ

 出張などで地方に向かうときは、地域の氏神さまや神社に足を運んでいます。私自身が特別になにかを信仰しているわけではありません。ですが目に見えないものに対する畏怖の念を忘れてはいけないと思っています。
 批評家の小林秀雄さんの言葉だと記憶しているのですが「人間が目で見えることとか数値で測れることしか信じなくなったのは、ガリレオ・ガリレイ以来最近500年の流行である」と。500年といえども、何万年・何十万年という人類の歴史に比べたら最近というレベルなのです。目に見えない不思議なことが起こっても、別に驚くことではないと思っています。だから神仏の前で手を合わせるということを日本人が長く行ってきたのだったら、素直にそれを踏襲するべきだと思っています。そのような行為がもし意味がないことだとすれば、それはどこかで断ち切れているはず。数字で明らかにしたり科学で証明できないから嘘だというのはナンセンスだと感じます。

10. 「偶然くん」に感謝して恩を返す

 私がこのように会社を継ぐことになったのも、新たな事業をはじめようと思ったのもまったくの偶然です。今は仏教と少しばかり関わりのあるビジネスをしていますが、私自身は特定の宗教を信仰しているわけではありません。それは特定の宗教には意図的なものを感じたりするからです。でも、目に見えない力を感じていないわけではなく、代わりにこのように導いてくれる力を「偶然くん」と命名しています。この偶然くんの良いところは、特定の宗教とは違って特段の見返りを求めないということ。この偶然くんは縁と言い換えることもできます。縁は人間と社会が織りなすものだとすれば、私は社会に対して何らかの役割を果たすことで、そのご恩に報いたいと考えています。

まとめ

 生活習慣は5年後、10年後の自分に響いてきます。地味な習慣でも、意識して毎日続けることが大事。この機会に、今一度自分の生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。

Prof

清水祐孝さん

1963年生まれ、慶應義塾大学卒業。国際証券株式会社を経て、1990年、株式会社鎌倉新書に入社。
仏教・寺院関連の出版社であった同社を、葬儀・お墓等の供養関連の情報ビジネスに業態を転換。消費者、供養関連の事業者に向けたセミナーやコンサルティングを行う傍ら、1999年より国内初の供養系ポータルサイトいい葬儀いいお墓いい仏壇を運営。

薄井千春
編集者。出版社では雑誌の編集記者として150人超のベンチャー経営者を取材する。事業会社で旅行記事のWebライティングを手がけたのちに株式会社ZINEに入社。得意ジャンルは起業・新規事業動向と旅行。最近気になるのはPCゲーム。