ストレス社会を香りで解決?前代未聞のソニー新製品「AROMASTIC」の可能性

oe01

テクノロジーによって人々の生活を豊かにしてきたソニー。ウォークマンをはじめ、人々のライフスタイルを変えるようなさまざまな製品を世に送り出し「ソニー」というブランドを確立してきました。同社は2014年から、Seed Acceleration Program(SAP)という、既存の事業領域外の新しい事業アイデアを集め、育てていくことを目的とした新規事業創出プログラムを発足させています。

新規事業創出プログラム・Seed Acceleration Program(SAP)とは

ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(以下、SAP)」は、2014年4月に社長直轄でスタートした社内スタートアップ支援の仕組み。ソニーグループの社内から提案される新たなビジネスコンセプトのスピーディーな事業化を促す形で、さらなるイノベーションを創りだしていくことを目指すプログラムです。

参考:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/newbusiness/

新規事業をサポートするSAPの施策のひとつとしてソニーが2015年7月に立ち上げたのが「First Flight」。ソニーが運営しているクラウドファンディングとECを兼ね備えたサイトで、SAPから生まれたプロジェクトの製品開発やチームの様子も公開され、プロジェクトがお客様の声を直に聞いてニーズ検証や商品改善などができる「共想」「共創」の場です。

HTA2SK9FcRMu ApbDPHR8b4fW C878nH78jJYuowWkYMT2eoW yZiBh9eTMt1aBs 9 fBCg899iKukzcrvS Z0toJ8rxecAZKoUE tvJzSVXHLPJe8cNWWlRlTDAM0qPYfeCHwWm
https://first-flight.sony.com/

今回は、実際にSAPの中で新規事業に挑戦している2人の事業責任者に話をうかがいました。

2人目は、パーソナルアロマディフューザー「AROMASTIC」を開発・販売する、同社OE事業室の藤田修二さん。研究者から新規事業責任者へとキャリアを変えた藤田さんに、自身の挑戦や製品への思い、今後の展望について語っていただきました。

研究分野を生かし、一般消費者の手に届く製品を作りたかった

私は2009年にソニーへ入社し、先端マテリアル研究所に配属されました。3年ほどプロダクト開発に携わったのち、社内の留学制度で1年ほど渡米。留学後は研究所内の別組織に戻り2年ほど研究開発をしていました。研究所では直接最終製品を開発するのではなく、製品に使われる部品や将来部品として応用できそうなものなどの、基礎的な研究開発を行っていました。

入社前は大学で化学やバイオの研究をし、物質をやり取りする化学シグナルであり、喜怒哀楽を司る大脳辺縁系に直接刺激を与える「香り」の持つ可能性や奥深さに魅力を感じていました。自分の専門分野を何らかの形で生かしたいと思っていたのです。

それにソニーは、一般消費者向けの最終製品で名高い企業。私が渡米したときも、ソニー社員だと言うと「今はどんな製品を作っているの?」という話になりました。スマートフォンに使われているイメージセンサーもソニー製品だよ、とこちらが誇らしげに言っても反応はいまいち。多くの人がソニーに期待しているのは、一般消費者向けの最終製品なのだなと痛感しました。

一般消費者向けの製品は特に、製品を確実にヒットさせられるかどうか分からない市場。そんな世界で長年戦ってきていて、ソニーブランドを確立しているのは誇らしいことです。自分もソニーに籍を置いている身ですから、一般消費者が手に取る製品をプロデュースしたかったのです。

そこで、アイデアをもとにSAPのオーディションに応募し通過。現在、「AROMASTIC」を展開するOE事業責任者として事業拡大に奔走しています。

香りを選んで、いつでも気分をスイッチできる

AROMASTICは、自分だけにアロマを香らせる製品です。1本のカートリッジにあらかじめ数種類の香りを持ち運べ、スイッチを切り替えれば香りも変化します。

日々の忙しさの中で、途切れがちな集中力をキープしたい。そんな時にさっとミントタブレットを口にするように、香りで気分のスイッチを切り替えられないか?と考えたのがこの製品。現在は「新しいチャレンジを応援する」「美しい日々へ誘う」などのテーマに添った香りを詰めこんだ4種のカートリッジを販売しています。

IyLfva641feicubcFt4Mnw9mibhoysuVVotGe6QA1KvCt7pOB8dUeQUuK3NX IJBjgBweK79A03FXcAfHoZZUN0guj3g3HhmKK1tQOFRNyKQFEhA81JrbK4gTsbwWAwdTZWL3lru

シンプルながら今までにないコンセプト

この製品のコンセプトは香りというコンテンツをもっと身近に活用するという点です。いつでもどこでも香りをかぐことで気分をスイッチする、言葉だけの説明だとありふれているかもしれませんが、実際に試していただくと皆さん、「そういうことか!」「なるほど!使える!」とおっしゃいます。ボタンを押して香りをかぐ、シンプルだからこそ新しいライフスタイルを提案できるのだと思っています。

NN7tiN8OR7nF qT7I8LYTBu20xkCsb1G4DwTM3OzuvZsa8qRdFABjIVmwQsHKPphJ6Z Esr11lKSnjh6XYD1o9j2v53wR 8lMPiNr1Pbtf4PRWduRfyIb2wzXRe6Ot78f4v2L1vi

アイデアをもとに簡単なプロトタイプを作ると、予想以上に周りの反応は好感触。「これちょっといいな」「おお、なるほど」と。こうした反応をもらえるとは予想だにしていませんでした。

オーディション通過後は約1年で製品化・量産化までこぎつけました。既存製品のマイナーチェンジでも同じくらいの期間がかかる中、1年で新製品をゼロから作ったと考えると、とてつもなく早いスピードだったと思います。

プライベートにも配慮しつつ、自立しているチーム

事業自体にスピード感はあるものの、メンバーの時間の使い方や働き方はフレキシブル。各個人に裁量が与えられているのが特徴です。自主性と自律性を重視しています。

最低限のルールはありますが「何時何分までにここに来て、ずっとここで仕事してください」と言うつもりもありません。メンバーによっては「気分を変えたいので外で仕事してきます」という人もいます。

勤務時間自体も自分でコントロール。これまでいたメンバーの中には、子供がいるので5時に帰る方もいましたし、今後もプライベートの時間は配慮していきたいところです。

OE事業室は少人数ではありますが、女性や若い人も多く、多様性もありバランスは良いと思います。メンバーの性別・年齢はさまざまですが、柔軟な考え方を持っている人が多いように感じています。

ワクにあてはめようとせず、自分なりにプロダクトを解釈できる人

AROMASTICは前例のないプロダクト。過去に比較するものがなく「どう動けばいいのか?」と道に迷うことも多々あります。

そんな時、メンバーには世の中で一般的に言われているような、安易な問題解決方法・セオリーに頼って欲しくありません。

たとえば新規事業では「イノベーターにアプローチして、その後アーリーアダプターを経てキャズムを越える(一般化する)」と言われていますが、事業によっては、最初からマジョリティにたどり着くこともあるかもしれません。

メンバーには、AROMASTICならではの戦術を考えるよう心がけてもらっています。

なんでもやりたい、欲張りな人

自分の担当範囲の結果だけに満足して欲しくありません。チームや事業として必要であれば、たとえばマーケティング担当でも販路の拡大につながる商談にも行くことや、それこそ極端ですが設計業務もやることに手を挙げていただいてもかまいません。自分の経歴にとらわれない働き方をしたい人には、けっこういい環境ではないでしょうか。

プロダクトを世の中に広げる人と働きたい

Xa0Qyjp41ST1OTQEX gfoOX9bPS016jLOw3Fp3v3gsxfbc5O3tAAzWgfF9YpTgul9PGOV5ZZkZPAspZLRT2QBKGsf03fX3Sfzh2jpTIbK2jeIsVT IauZRBmliO3EyPHyXpAJKma
AROMASTICを世に広めていくには、現在、マーケティングや営業の分野でチームを引っ張ってくれる人が必要です。一般消費者向けプロダクトのセールス経験者はもちろん、数値に責任を持った経験がある人にはぴったりでしょう。

ユーザーが製品を買うか買わないか、というラインはとてもシビアで情緒的な行動がともないます。メンバーとは「どうやってこれを売ろうか?」という基本的なところを、ともに真剣に問い続けていきたいと考えています。

ストレスって何だっけ?と言える社会を目指す

OE事業室では「香りをつうじて、人々のこころを豊かにする」ことを追求していきます。

世の中は技術革新により効率化と合理化の階段を1段ずつ登ってきて、たった5年前と比べても見違えるほど生活が便利になりました。一方で心の豊かさという点では30年前も今も変わっていないように思います。ストレス社会という言葉もずっと前から言われていますが、なんとなくこのまま言われ続けるのではないかとふと思ってしまいます。

こうした現代社会に、香りが果たす役割は大きいと思っています。

考え事をしていても香りがふわっと漂ってくるとハッとする。一瞬何を考えていたか忘れるということがあります。実は人間にとって香りは喜怒哀楽に直接響くんです。香りをうまく活用することでストレスを減らせるとしたら、暮らしはもっと豊かになるはず。

もしかすると「ストレス」という言葉すらなくなる世界が実現できる。このプロダクトにはそんな可能性を感じています。