情報とジョークは惜しみなく! デーブ・スペクターさん、妻京子さんの習慣

“習慣”は人を作るもの。とくに現在まで長期間かつ継続的に行っていることは、その人にプラスの影響をもたらす良い習慣といえるでしょう。本連載では、社会の第一線で活躍するビジネスマンに、今まで継続している良い習慣を10個紹介していただきます。
 今回ご登場いただくのは、タレント、エッセイストの京子スペクターさん。夫のデーブ・スペクターさんから学んだ、またデーブさんを支える妻として、株式会社スペクター・コミュニケーションズの社長として、日ごろ心がけている10の習慣をうかがいます。

1.スケジュール管理を徹底する

 日々の仕事でもっとも大切にしているのはスケジュール管理です。お約束した時間や日にちを間違えると、お仕事がなくなるだけではなく、クライアントさんなど様々な方にご迷惑をおかけしてしまいます。会社が終わる前に、今日どういう仕事をしたのか、どういう仕事が入ってきたのかを、スタッフと必ずすりあわせています。
 スペクター・コミュニケーションズの社員は4人。私を含めても5人と、テレビのプロダクションとしては小さな規模です。多くのマネージャーを抱えているわけではないので、ひとりで何でもできるように、スタッフ自身の時間管理も徹底するようにしています。

スケジュール管理にはPowerPointを使用している。
スケジュール管理にはPowerPointを使用している。

2.情報は惜しみなく提供する

 デーブの元には、日常的にプロデューサーなどテレビ関係者からの相談の電話がかかってきます。彼が出演していない番組のプロデューサーであったとしても、自分の知っている面白い情報を提供し、時には独自に調査をして教えています。長く日米のテレビ業界に携わってきたデーブのアドバイスは、金銭に換算すればかなりの額になるでしょうが、すべて無料でおこなっているのです。
 彼のアドバイスによって大きく成功した番組はいくつもあります。ひとつ挙げるなら『クイズミリオネア』(フジテレビ)でしょうか。みのもんたさんの「ファイナルアンサー」というフレーズで有名なこの番組は、もともと一般人の参加者がクイズに挑戦する形式でした。ところが視聴率が低迷し、打ち切りになりそうだと、制作プロダクションから助言を求められたのです。その時のデーブのアドバイスは、「一般人ではなく有名人を回答者にすればいい」というものでした。そして番組はリニューアルし、人気番組へと成長することができたのです。
 デーブがテレビ関係者から強い信頼を得ているのには、以前からこうした情報提供やアドバイスをしてきたからなのです。

3.裏切られても恨まない

 こういう仕事をしていると、人に騙されたり、裏切られたりすることはあります。そうしたとき、デーブは決して人を恨んだり仕返しをしたりはしません。最近、タレント活動を復活された元大阪市長の橋下徹さん。実は、大阪で弁護士をしていた彼のタレントとしての才能を見出し、東京の番組に紹介したのはデーブです。彼のプロフィール資料を作成し、テレビに関係者に売り込んだことで、『サンデージャポン』などに出演し、一躍人気タレントの仲間入りを果たしました。彼のマネジメントも私たちで担当していたのですが、ある日突然にFAXで「本業の弁護士の仕事に専念したいので、タレントをやめたい」という書面が送られてきました。デーブも、そういう理由なら仕方がないと了承したのですが、ほんの数か月で他のタレント事務所に所属することが発表されたのです。私は、悔しい思いがあったのですが、デーブはまったく文句を言いませんでした。それどころか、政治家になった後でもメールでやりとしをして、彼が失言で叩かれたときなどは親身にアドバイスしていました。
 彼のこういう面は、本当に見習うべき点だと思います。人を恨んだりしてもいいことはありませんから、私も明るく前向きに考えるようにしています。

4.辛いときは「最後の目標」を設定する

 SMAPの解散騒動の時、デーブがテレビで「テレビ局がいちばんパイプを持っているのに一切独自取材をしていない」と発言し、ネットで話題になりました。「外国人だから好きなことが言えるのだろう」などと書かれましたが、そんなことはありません。干されるときは干されます。あれは、純粋に彼の正義感から出た言葉なのです。
 むしろ、外国人だからこそ辛い思いもしてきました。かつてテレビ朝日の『朝まで生テレビ』が人気だった時代、アメリカ人で出演していたのはデーブぐらいで、湾岸戦争などがテーマとなると、アメリカの悪いところはデーブが悪いとばかりに攻撃されたのです。この時ばかりはデーブも、「日本が好きだけども、こんなに理解されないならアメリカに帰ろうか」と弱音を吐いていました。私は、彼を励ます意味で、まだ出演したことがなかった『徹子の部屋』に出られたら帰りましょうと言いました。そして、『徹子の部屋』に出演したら次の番組と、別の目標を立てて頑張ってきました。そうしていくうちに環境も変わり、今では「外国人だから好きなことが言える」とまで言われるようになったのです。

「ときに日本に厳しい意見を言うのは日本が好きだから」「誤解や誹謗中傷は放っておけばいい」がデーブ流なのです。
「ときに日本に厳しい意見を言うのは日本が好きだから」「誤解や誹謗中傷は放っておけばいい」がデーブ流なのです。

5.勉強やリサーチを欠かさない

 テレビ番組では、必ずしも出演者が自由に話せるわけではありません。番組によっては、司会者から振られなければ、いくら良い情報を持っていたとしても話すことができません。明らかにデーブが詳しいジャンルなのに、アイドルに話を振られたりするのを見ると、私は歯がゆく感じるのですが、デーブはマイペースを崩しません。話を振られないとしても、必ずできる限りリサーチしてからスタジオに入るのです。
 彼の持っている情報は、すべて自分で調べたオリジナリティの高いものです。私は妻として、彼が睡眠を削ってまでリサーチしたり勉強したりしているのを見ています。家でもぐうたらしている日は1日もないのです。彼の日本語も若い頃から地道に勉強してきた成果です。そういう姿を見ると、私も持続することの大切さを思い知らされますね。

6.常にベストを尽くす

 海外の映像を輸入してテレビ局などに販売するのも、スペクター・コミュニケーションズの事業のひとつです。最近はテレビ局がYouTubeの映像を使うことも増えましたが、私たちはあくまでも日本初公開の映像にこだわっています。独自に映像を見つけるのは大変な仕事ですが、そうでないと競争に勝てません。現在、競争相手がいなかったとしても、いつ他の会社が参入してくるかもしれませんから、常にベストを尽くす必要があります。

スペクター・コミュニケーションズのオフィススペース。タレントのマネジメントや海外番組や映像の買い付けなどが主な業務。
スペクター・コミュニケーションズのオフィススペース。タレントのマネジメントや海外番組や映像の買い付けなどが主な業務。

7.独自の視点を磨く

 ベストを尽くすのは、タレントとしても同様です。日本には、外国人のタレントさんは多くいらっしゃいます。それだけに、鍛錬をし続けていないと、すぐに忘れられてしまう。かつては、デーブがプロデューサーの方から片言の日本語で話すよう求められたこともありました。たどたどしい方が面白いというわけですが、彼はせっかく努力して覚えた日本語を、わざと下手に話すのは嫌だと断りました。
 そういう表面的なおもしろさではなく、コメンテーターという影響力のある仕事を引き受けたからには、ただ感想を述べるだけではない、独自のメッセージや情報を発信できるよう、彼は努力してきました。それが、たくさんいる「外国人タレント」の中で、生き残ってこられた理由のひとつだと思います。

8.短い時間でも必ず毎日夫婦で話す

 夫婦円満の秘訣は、相手をどれだけ尊敬できるかではないでしょうか。尊敬がないと愛情もなくなっていきますから。私の場合は、毎日一生懸命働いているデーブの姿を見ることで尊敬しています。もうひとつは、のろけに聞こえるかもしれませんが、私に対しての優しさ。結婚した今も変わらずに思ってくれるという思いが伝わる。そういう人に対して嫌な態度は取れませんよね。
 そして、短い時間であっても毎日のコミュニケーションは欠かさないようにすることです。私たちの場合は、テレビの仕事について、今日どういう人に会った、どんなものが流行っているかなどが共通の話題です。一方的な興味で話すのではなく、お互いが興味を持っている話題であれば、短くても濃い内容になるのではないでしょうか。

結婚当初よりデーブからは「家事はやらなくていい」と言われています。でも、風邪を引いたときにチキンスープを作ったら、すごく喜んでくれましたね。
結婚当初よりデーブからは「家事はやらなくていい」と言われています。でも、風邪を引いたときにチキンスープを作ったら、すごく喜んでくれましたね。

9.地位で人との接し方を変えない

 デーブと結婚してから、よく新聞や本を読むようになりました。昔はネットがなかったので、文字で読まねばなりませんでした。八重洲ブックセンターなどの大きな書店に行って本を探すのは楽しかったですね。ただ、著名な方で本では立派なことを書かれていても、実際にお会いするとその方のされていることや印象が大きく本と異なることもあります。そうした経験から、著名であるとか地位があっても、必ずしも尊敬できる人間とは限らないと学びました。
 デーブは相手の地位で接し方を変えることはありません。タレントさんの中には、プロデューサーにはぺこぺこしてもADさんは邪険に扱うような人もいますが、彼は一切そういったことがないのです。何しろ、付き人がいると彼の方が気をつかってしまうほどなのです(なので、デーブさんの付き人はいない)。デーブはADさんに対しても、きちんと接します。いろいろな局で、「かつてADだった時にデーブさんに声をかけてもらって嬉しかった」と聞きます。20年前はADだった方がプロデューサーになり、お仕事につながったこともあります。

10.ご縁を大切にする

 私は、ほぼ毎日のようにレセプションやパーティーに参加しています。パーティーというと派手に遊び歩いているように思われるかもしれませんが、もともとは多忙なデーブの代わりに伺っていたのが始まりで、お誘いを断るのは失礼という思いからしてきたことです。
 そして、多くのパーティーに伺うことで人脈が広がり、さまざまなご縁をいただいてきました。そのひとつが、昨年拝命したアルバニア共和国名誉領事のお仕事です。数年前から大使ご夫妻より依頼されていたのですが、ずっとお断りしてきました。ですが、私にできるのであればとお受けしたのです。名誉領事は、観光大使や親善大使とは異なり、両国の外務省がOKを出さないとなれず、国の要人との会合など求められる仕事も高度です。この夏には、文部科学大臣とともにアルバニア共和国を訪問します。私の持てる人脈や映像の仕事を通じて、両国の関係を深めていきたいと考えています。

テレビのスタジオを模した会議スペース。見た目にもこだわるのがスペクター流。
テレビのスタジオを模した会議スペース。見た目にもこだわるのがスペクター流
仁田坂淳史
日刊キャリアトレック編集長。出版社での雑誌編集、mixiを経て独立。出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。mixiではFind job! Startupの立ち上げを担当し7ヶ月で100万PVまで育てた。