豊洲タワマン、上場ベンチャー役員、年下美人妻……全てを掴みかけて失った転職タラレバ男子の人生

あの時に転職していたら……キャリアについて考えていれば……。日刊キャリアトレック編集部が会社員の方々にキャリアにまつわるタラレバエピソードを聞いてみました。

今回お話をしてくれた方:松本さん(仮名)33歳/明治大学理工学部卒/ITベンチャー企業から……

私が就職した2006年はまだ好景気で、就活は売り手市場。各企業が例年よりも採用数を増やしており、私は複数社から内定をもらえました。

入社したのは社員30人にも満たない小さなIT企業(以下A社)。サイバーエージェントのように上場を目指していたA社で、エンジニアとしてキャリアをスタートさせました。

会社は順調、3年目には研修責任者に抜擢

A社は私の入社後も順調に売上を伸ばし、毎年社員が倍増していきました。30人だった社員も、2年目には50人、3年目には100人といった調子。

会社がまだ小さかったころに入社した私は、人が増えるたびに役職が上がり、3年目には新卒や中途採用者向けの研修を行う責任者に抜擢されました。

仕事は忙しく毎週土日のどちらかは出社していましたし、平日もだいたい終電帰り。でもその分やりがいもあったので、仕事に対しての不満はありませんでした。

新人女性と深い仲……バレたら終わりの社内恋愛

その頃、後輩社員と交際をはじめました。

仕事の相談を受けているうちに親密な仲になり、社内恋愛に発展。新人研修の責任者が新人に手を出したなどバレたら終わりです。会社の人間には誰にも言わず、愛を育みました。

彼女はまだ新人なので遅くとも夜8時ぐらいには退社。そのあと私の部屋に直行し、終電で帰るのを手料理を作って待っていてくれました。

もちろん給料もよかったです。同世代の倍近くの給料をもらっていました。給料に恵まれ、プライベートでは年下の美しい彼女。今にしてみれば、あの頃が人生の絶頂期だった気がします。

人生の絶頂期、豊洲タワマンで美人妻との家庭を妄想する日々

入社5年目、会社は急成長ベンチャーとして雑誌や新聞で紹介され始めていました。

経営陣は上場も見据えていました。このままいければ自分も上場企業の役員になれるんじゃないか……なんて淡い期待もしていました。

もしそうなったら給料もさらにハネ上がったでしょう。美しい妻と豊洲のタワーマンションに住んで、子どもはインターナショナルスクール通い……そんな妄想ばかりをしていました。

会社の業績に暗雲も楽観的だった自分

ところが翌年、暗雲が立ちこめます。会社の売上が、初めて前年を下回ったのです。

ただ経営陣は想定内だったようです。今年数字が落ちるのは次の事業のための種まきの時期だからで、その分来年には売上が3倍4倍を狙える。当時の私はその説明をなんの疑いもなく信じていました。

倍々ゲームで増えていた給料もそのときは昇給が見送られ、ボーナスも前年度の半分に。それでもまだ私は「今までが良すぎたからこんな年もあるよな~。でも来年、売上が3倍4倍になったらボーナスも3倍4倍だなぁ」などと、恐ろしいほど楽観的でした。

新規事業で一発逆転を狙うも……悲惨な状況に

次の年は、私の楽観とは裏腹に、前年度の売上維持も難しい状態になりました。それまでの大口顧客から契約を切られてしまったのです。

ここで焦った経営陣は一発逆転を狙って新規事業にチャレンジしました。今までまったく扱ったことがない分野に手を出し始めたのです。

もしもこれがテレビドラマだったら、起死回生の賭けがドカンと大当たり。たちまち会社は危機を乗り切る……なんてストーリーだったでしょう。

でも現実はそんなに甘くありませんでした。

新規事業に失敗し、元々の事業までもが縮小。

それからは悲惨でした。毎月、古株の役員や社員の誰かが会社を去っていく、そんな状況です。楽観的だった私の尻にも火がつきました。その頃はさすがにヤバいと気付き、身の振り方を考えるようになったのです。

転職エージェントからは「厳しい」の返事ばかり

それからいくつか転職サイトに登録し、転職エージェントにも数回会いました。

当時はスマホアプリやソーシャルゲームが全盛期。エンジニアなら引く手あまたで、いつでも転職できるような状況でした。私も元エンジニアなので一通りのことは覚えていました。

ところが私は途中から人材系にキャリアをシフト。エージェントは皆、「今の職種での転職は厳しい」との返事ばかり。一般社員のエンジニアでならなんとか転職はできるとのことでした。

けれど、私にはエンジニアとして中年までやっていく自信がありませんでした。悩んだ末、人材系のキャリアを評価してくれる転職先が見つかるまで、粘ることにしたのです。

結果、都内で仕事は見つかりませんでしたが、私に興味を持ってくれる企業が地元で見つかったのです。転職サイトで200社以上に応募しましたが、唯一好感触の返事をいただけた企業。迷わず転職を決断しました。

地元での再出発、でもあのときキャリアについて考えていたら……

Uターン転職なので、もう都内での生活はできません。彼女には一緒に地元に来ないかと誘いましたが、都会育ちの彼女は首を縦に振りませんでした。どうしても都内を離れたくなかったようで、転職を期に別れました。

転職先の企業はいい意味でのんびりしており、職場環境はとてもいいです。給料は前職よりも減ったものの生活コストが安いので十分です。現在はお嫁さん探しに精を出しています。

ただ、もっと早く転職していれば、キャリアを考えていたら……と考えることもあります。

(了)

日刊キャリアトレック編集部
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